WEB仕事を生業とする故か、手帳などと言うものは、昭和の遺物などと公言して、特にこの数年は、筆記具を使って書くという作業とは無縁の暮らしを続けて来た。
外出時にはノートPCを持ち歩くのは当然だ。やれスマートフォンだ、タブレットだ、常に電子機器末端に囲まれ、ペーパレスなライフスタイル、などと嘯き時代の最先端を走っていた、、、
つもりだった。
実はそんなものは「幻想」だったと、ようやく「現実」に気がついたきっかけは長く続いた入院生活だ。
病院内では規則正しい生活を当然の事ながら強いられる。
そんな中でPCを始めとする電子機器の使用は見事に制限されてしまい、病院暮らしが長くなるほど、これまた当然、仕事はままならず、感じた事、思いついた事、アイデア一つ残しておく事すら出来なくなってしまったのだ。
そもそも、入院するきっかけとなったのが二十四時間エンドレスに続けられる毎日のWEB仕事。いつでもどこでもを謳って、延々と終わる事の無い何かに向かってキーボードを叩き続けてきた。
こんな暮らしが永遠に続く訳が無い。
気がつけば、リカバリが不可能なぐらい私の体はポンコツに。
病院の売店で購入したジェットストリームのボールペンとコクヨの便箋、一文字ずつゆっくり文字を書く時間の流れにようやく慣れた頃、退屈な病院での暮らしも終わりを迎えた。
自宅に戻ってまずしたこと。
引き出しの奥で眠っていた、ほとんど使われる事のなかったトラベラーズノートを引っ張りだした。
疲れた時には、この手帳に文字を書く事で慌ただしい現実を一時忘れる事が出来る。気がつけばアラフィフだ、デジタルな暮らしは相変わらずではあるが、今の私のマストアイテムの一つとして必ず側にあるのは、お気に入りの手帳。
手帳のお陰で、忘れていた文房具の楽しみを思い出し、スローなライフスタイルも10年後に向けて構築中である。